2011年2月 第435冊
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池波正太郎 「鬼平犯科帳11」 文春文庫
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鬼平は面白いと書きつつ、前巻10巻を読んだのは昨年9月、
あれから4ヶ月も経っている。
もう少しテンポを上げた方がいいね、池波正太郎はこの鬼平だけにあらず、
剣客商売や梅安、真田太平記と大シリーズや大作が待っている。
少年時代司馬遼太郎で歴史小説に入門した者にとって、
池波の酸いも甘いもな世界はとっても楽しい。
4ヶ月ぶりとはいえ数ページ読み始めただけで、
すぅっと鬼平の世界に戻っていく。
「男色一本饂飩」「土蜘蛛の金五郎」「穴」「泣き味噌屋」
「密告」「毒」「雨隠れの鶴吉」の全7編。
初っ端の「男色一本饂飩」はドキっとする題名だが、
実際の内容もかなりきわどい。歴史時代小説と
男色は切っても切れないテーマで、戦国・江戸期は
男色・衆道が盛んだった。
武家ほどその傾向が強く、男色を絡めた作品も
自然と多くなる。本編ではサブキャラとして
重要を成す兎忠が男色を狙われ危機を脱せるか?
とハラハラドキドキ。
鬼平は兎忠の操を信じてやるが、
どうとでも取れる描き方をしてしまっている
池波先生の容赦なさが怖い。
「土蜘蛛の金五郎」では、二人の「鬼平」が戦うという、
ちょっと映像を意識しすぎた面白作品。
ドラマ受けを想定して描かれたような気がするが、
実際のドラマで是非観てみたくなるシーンが出てくる。
冒頭の男色はお笑いで済ませられても、
「泣き味噌屋」は悲惨の限りを描いている。
愛する新妻を陵辱された泣き味噌な武士が、
死んだも同然の気持ちで悪党を一刀両断する話。
悪党は叩きのめし泣き味噌な汚名は晴らせるが、
死んだ妻は帰ってこず、後味の悪い作品も淡々と混ぜている。
極悪非道集団を取り締まる火付盗賊改め方に身を置いている、
男達の戦慄が実に伝わってくる作品が挟まれることで、
鬼平の厳しい環境が作品をよりリアルに仕上げていると思われる。