2011年4月 第442冊
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倉都康行 「金融史がわかれば世界がわかる」 ちくま新書
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歴史が好きです。
小学生のとき吉川英治「三国志」「新平家物語」を読んで歴史小説に目覚め、
中学時代は司馬遼太郎を、その後南條範夫・海音寺潮五郎にはまり、
全作品読破目指して今も集め、読み進めている。
上記の歴史作家は戦国・江戸期に主要な作品群があるため
私も主に戦国時代小説を楽しんできた。
それはそれで読み深めていくのも面白いんだろうが、
私は時代を幅広く読んで行きたいタイプだ。
室町南北朝や鎌倉平安期に時代を遡りロマンを求める人も多いが、
私は幕末維新より、明治以降から太平洋戦争に興味を持つタイプだった。
今は戦前戦中を書いた書物を蒐集しており、特にイフもの(もし・・・だったら)
が好きなんだがこれが、これが意外と多く探すと成果があって楽しい。
太平洋戦争は読めば読むほど無謀な戦いだった事が判るんだが、
多くの日本人はやっぱりこの敗戦が悔しいんだろう。
さて、そんな歴史好きは広がって、最近は世界各国の歴史にも
触手を伸ばしており、今回は「世界の金融史」。
本書では、英国金融の興亡から始まって、米国への覇権移行、
為替変動システム、デリバティブ、ユーロ登場による国際金融の二極化。
2004年の著作なので、この後に起こったリーマン・ショクや
ギリシャ・ショック以前である。
現在のユーロは南欧諸国の財政事情によって惨憺たる状況であり、
2004年時に心配していた著者のユーロ興隆は実現していない。
それどころか、遠い将来中国が脅威になるかもしれないと想定しているが、
これまた遠い将来どころじゃない現実となっており、これだけ長い
金融史を熟知している人でも、数年先の未来を当て切れていない。
経済や金融の明日を見通すことは本当に困難で、どれだけ過去の知識が
蓄積できていても、その過去の裏を掻いた新手が登場してくるのが昨今である。
とは云っても、歴史を知るのは面白いもので、歴史を武器にした上で
未来を考えるのが正攻法と云うもの。
金融覇権が米国に移ったあたりまでは歴史モノっぽくてさくさく読めたが、
混迷を極めだす為替変動システムやデリバティブが説明されだしてくると、
記述内容が難しくて読むのが大変だった。