2011年7月 第454冊
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ハイスミス 「黒い天使の目の前で」 扶桑社ミステリー文庫
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三十ページ前後の短篇11から成る短編集。
正直、何度も読むのを放擲しようと思った。
しかし一篇30ページほどの短編集なので、
この1篇で、この一篇で、と読むうちに半分ほど読んでしまい、
ここまで来たら全部読むかと思い直し・・・読破した。
翻訳が悪いというよりは、原文が思いっ切り英米文みたいで、古臭い文学体。
1981年に原書は初版されたそうで、今から三十年前。
当時のミステリではなかなか突飛なアイデアなんだろうが、
最近の面白すぎるエンタテイメント作品を知っている現代人からしてみれば、
三十年前の作品は陳腐。
当時はハイスミスも好まれたんだろうが、
もう3捻りくらい咬ましてくれないと、
想像した通りの結末だな、と。
原題は「黒い家」。
しかし「黒い家」といえば貴志祐介が先に来ますし、
邦訳版本書が1992年初版された時、「黒い家」では
インパクトが弱いと思ったのでしょうか。
そうは言っても一気読みした作品もあり、
「うちにいる老人たち」の家を乗っ取られつつある恐怖とラストは面白いし、
「ローマにいる時は」の憎たらしいヒロインが引っ繰り返る展開もワクワクした。
実はハイスミスの文庫本をほとんど購入してあって、
「リプリー」以外は捨ててしまおうかと悩んでいる。
もう読む気も失せているアン・タイラーも同様。
こういった海外作品が好きな人は多いし、ネットで読書感想を探すと
「どれほど面白いんだろ?」と関心を持つほど絶賛されており、
大して読んでもいない作家をどんどん蒐集してしまった自分に責がある。
自分が本当に面白いと思う本だけ読むのが理想だが、
自分が気付かない「世に言う名作」も苦労して読むべきか。
死ぬまでにあと何千冊読めるか、今未読蔵書は千五百冊。
無駄な読書もそろそろ端折っていくべき頃なのか・・・。