2011年7月 第455冊
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飯山幸伸 「ドイツ戦闘機開発者の戦い」 光人社NF文庫
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副題「メッサーシュミットとハインケル、タンクの航跡」
第1章で、WW1までを描き、
第2章で、ハインケル、
第3章、メッサーシュミット、
第4章、クルト・タンクの人生
を追うことで、
ロールバッハ社・メッサーシュミット社・フォッケウルフ社と
転籍してゆく流れを描く。
著者飯山幸伸は実に私好みな嗜好で、メジャーよりマイナー好きな人。
彼の光人社NF文庫は多いが、「弱小国の戦い」「弱小空軍の戦い方」
「中立国の戦い」といった注目すべき着眼点本があるし、
「異形機入門」「世界の仰天機」なんて面白そうな本がゴロゴロ。
本書「ドイツもの」は王道すぎて著者としては珍しい部類だが、
それでも飛行機マニアには避けて通れないのがルフトヴァッフェ(ドイツ空軍)。
アメリカは機材や基本ラインを共通化することで大量生産に成功したが、
ドイツや日本は職人魂が災いして、小さな改変や改造、
飽くなきヴァリィエイション拡大で互換性・共通化が無くなった。
しかし現代人が当時の稀少機種を一個一個俯瞰すると、
少しづつ完全体を目指して変貌してゆく改作機の方が興味をそそられます。
本書は全444ページ、みっちりと機体データや製作エピソードが
てんこ盛りで、航空ファン納得の一冊。
うち168ページは航空機図面に割かれており、どんな機種なんだろう
と思ったら次ページにその機種図面が載っているという親切さ。
優秀な飛行機ってだけで採用されたのでなく、
空軍や航空省のお偉いさんに嫌われてると不採用だったり、
望んだエンジン供給が受けられないため性能が落ちたりと、
お馬鹿なことをやっているうちにドイツは傾いていきます。
日本にせよドイツにせよ、人災老害ほど怖いものはありません。