2011年8月 第458冊
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池波正太郎 「鬼平犯科帳」12 文春文庫
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鬼平全24巻中、第12巻。
ようやく半分まで来ました。
鬼平や御宿かわせみを読んでいて思うことは、
超長編ともなると「波」があること。
作家だって人間ですから体調変化もあろうし、
他の仕事も平行してやっていたのでしょう。
アイデアが乏しくなることもあろうし、
安定した人気長編で実験的試みをしてみたくなる事も
あるのでしょう。
この第12巻は久々に凡作で、新しい取り組みを目指す意気込みは
分るが、面白く仕上がっていない「密偵たちの宴」などを
収めています。
この「密偵たちの宴」は、今や鬼平たちの犬となった元盗賊たちが、
もう一度だけ見事な「お勤め」をやってみようじゃねえかと
悪巧みする「微笑ましい?」短編。
大金で薬を購わないと孫が死んじまうとか、過去の悪行を揺すられて
泣く泣く再犯するとか、そういったハラハラした「お勤め」復活なら
まだしも、世間で嫌われている因業商人から金を盗んでみようと
軽いノリで再犯してしまうのは、ちょっと鬼平にしては設定が軽すぎる。
「高杉道場・三羽烏」。
平蔵と左馬之助は無二の親友だが、当時もう一人の男を併せて
高杉道場の三羽烏と謳われたそうな。
そのもう一人の男が、盗賊となって現れた。
これは使いようによっては物凄いキャラになったのに、
この一作で殺られてしまう。
ここはなんとか生き延びさして、のちのちまで鬼平を
苦しめる存在にした方が良かったんじゃないの?
鬼平は圧倒的に強く、一騎打ちとなればまず負けない。
そんな先の見えた勝負は面白くなく、ギリギリまで
どちらが勝つか分らぬ、時によっては危機一髪で助太刀が
あってようやっと勝てるといった勝負も入れて欲しい。
第13巻以降、面白さが復活して欲しいものだ。