2011年9月 第464冊
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豊島ミホ 「青空チェリー」 新潮文庫
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「ハニー、空が灼けているよ。」「青空チェリー」
「誓いじゃないけど僕は思った」からなる短編集。
普通は表題作「青空チェリー」が冒頭で、もっとも長い作品かと思うが、
本書は違う。
ハニーが約128ページ、青空が約32ページ、誓いが約55ページ。
しかも単行本からの文庫化なのに、大幅改訂、1編は丸ごと差し替え。
よって単行本と文庫は中身が大きく違う。
両者の読み比べができれば、少し面白い。
さて、感想だが、三作品三様。
豊島ミホは、ラジオ番組の紹介で非常に興味を持った。
そこで本書だけでなく、彼女の本を数冊買ってしまっている。
だから1冊目の本文庫は、ぜひ「面白くあって欲しい」と思って読んだ。
ところが、「ハニー」・・・なんじゃこら?
新井素子を思い出すような文体で、ラノベとは
こういうものなんじゃないかなと思って読んだ。
SFチックな日本が核戦争に巻き込まれる設定の恋愛小説と、
枠組みは面白かったが、主人公の表面ぶっきら棒、
内面ナイーブという妄想文学少女が書いたような世界観が鼻に突いた。
「青空チェリー」はチェリーが掛詞で、くだんねえと思う。
若い人が読んだら、面白いのかなぁ?
全然面白くないんですけど・・・、え?私が年寄りだから?
そんな流れで、最後の「誓いじゃないけど僕は思った」を読むまでは、
豊島ミホの買い込んだ文庫本は全部捨てちゃおうかと思っていたが、
この作品でぐるりと考えが変わった。
男子大学生が主人公と初の男子目線。
中学生の片思いを大学四年生になっても引きずっている設定で、
これは読ませた。
文庫化で削除された一編に変わり差し込まれただけあって、
これは作品のレベルが違う。
こういった短編が書ける人だったら、もう一冊読んでみたい。
そう、思い直した。
今、休業?している点が、ますます興味を引く。