2011年9月 第472冊
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筒井康隆 「心狸学・社怪学」 朝日新書
若い頃、「文学部唯野教授」を読んで、ああなんて面白いんだろう
文学部おもしろそう!と憧れたものだ。
今となっては、文学を学問として学ぶなんて、なんて詰まらないことかと
思うが、阪大の文学部美学科で学んでみたかった。
今でも音楽関係の本は読んでるし、贋作モノも大好きだ。
そして、この本。
てっきり「文学部」の二番煎じ、まさにそれこそ望むところだったんですが、
全然違ってました。
心狸学・社怪学ともに各7短編からなります。
「心狸学」は、条件反射、ナルシシズム、フラストレーション、
優越感、サディズム、エディズム・コンプレックス、催眠暗示。
「社怪学」は、ゲゼルシャフト、ゲマインシャフト、原始共産制、
議会制民主主義、マス・コミュニケーション、近代都市、未来都市。
「ゲゼルシャフト」とか「ゲマインシャフト」なんて読んでると、
ページ端に「ゲゼルシャフト」と書いてあるわけです。
実際はそのお題を使った短編なんですが、誰かにチラリと見られたら
「この人、すごーい」と思われたりして・・・なんて思って読んでました。
筒井の若い頃の作品は、文体が未熟な点が悲しい。
上記「文学部」では文体も格調高く仕上がり、本格的な書きっぷりが
雰囲気までものものしかったのですが、本書「心狸学・社怪学」は付け焼刃。
背伸びした門外漢が、お題を使って似せたものを書いているのがありありで、
アイディアが良いだけに書き直して欲しい素材。