2011年10月 第474冊
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チャンドラー 「長いお別れ」 ハヤカワ文庫
ハードボイルドの聖典のように崇められている本。
原りょうのハードボイルドに感服している昨今、
本家本元のチャンドラーも読んでみますかと挑戦してみた。
537ページの長編、正直キツカッタ〜。
この本がキツイなんて、どんだけ読書ヘタレなんだよと思われそうだが、
本音感想がモットーだから小馬鹿にされても書くしかない。
自分の中のハードボイルドは、無口な主人公。
ところが主人公フィリップ・マーロウは、語る時は滔々と話す。
饒舌、欧米人と勘案しても胡椒が効き過ぎた言い回し。
その言い回しは、ひねりに捻って、もひとつおまけに捻ったり
するもんだから、結局なに言ってんの?と読み返すことがしばしば。
翻訳は精一杯上手にされてるから、原文はすごく凝ってるんだろうな。
私立探偵による一人称。
酒場で知り合った男と、そこまで友情を育むのか?と
のっけから厳しい設定。
酒場の友人は大富豪のアホ娘と結婚しており、
このアホ娘が男狂いという第二のありえ難い設定。
しかも酒場の友人ごときの友情のために、警察署で過酷な尋問を耐え抜く。
終盤で驚きの犯人判明があり、さらに五十ページも余白を使って
もう一度驚かせるミステリ好き喜びの二重構造。
私はミステリより歴史とか文学の方が好きなので、
こういったどんでん返しやトリッキーにあまり感動しない。
それより、文学的なセリフに注目しよう。
「さよならをいうのはわずかのあいだ死ぬことだ。」
まぁ。こういったハードボイルドの鏡のような言葉がギッシリ。
読書をうん十年続けているが、なかなか翻訳モノには親しみ難い。