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2011年10月 第477冊
岡田益吉  「日本陸軍英傑伝」  光人社NF文庫

岡田益吉  「日本陸軍英傑伝」  光人社NF文庫

日本海軍について少しは読んできた自負があるが、
陸軍は、ほとんど読んでいない。

満州や日中戦争モノの本は買い込んであるので、これから
読むこともあろうが、本書はその入門のつもりで手を出してみた。

しかし、どうなんだろう。
十人の陸軍将軍が英傑として採り上げられているが、
勝とうが負けようが、出世しようが予備役に退けられようが、
どうなろうが彼らは誉めちぎられている。

こうも一方的に、もしくは断定的に描かれてしまうと、
この評伝に信憑性があるのかと、いぶかしんでしまう。
あるのかもしれないが。

本書が司馬遼太郎とか藤沢周平とか、私が読み込んだ作家による批評なら
安心して信じてしまうが、申し訳ないが著者岡田益吉(新聞記者)は知らない。

しかも陸軍担当記者だったそうで、裏事情も知っておられようが、
ズブズブだったとも言える。

著者の主観が大きく、彼を信じるか否かに懸かっている。

当時陸軍は深刻な軍閥争いに明け暮れ、どっちが正義か私は分らない。
一つの信念を持てばこっちが正しいと決断できようが、
どっちもどっちだとか各々それなりの事由があったとかだと、
著者のようには断定しがたい。

結局歴史なんて根っからの判りやすい悪人なんて珍しく、
表があれば裏もあり、右がいれば左が現れる。

時代によって正義は変転するし、良いことも悪いこと
もいろいろやってるのが人間というもの。

陸軍が揉めた最大の事由はこれだ、
ソ連を最大の敵とし英米と親しむか、その逆か。

そのためには、まず隣国の中国と仲良く共栄し、
米ソに対抗できる力を、東洋で貯めるべきだった。

しかし実際に起こしたのは、中国を攻め、
ソ連との中立条約を頼んでアメリカと戦争をしてしまった。

これは2・26事件で親ソ派が排除され、対米戦に繋がったという。
挙句の果てに最後の最後でソ連に裏切られ、終わってみれば
ボコボコのボロボロ。

このような日本にしてしまった旧日本軍人に、
真の英傑なんて一人でもいたのだろうか。

ただ、一人の英傑がいても数の力に負ける。
将軍たちの半数以上が英傑だったら、日本は誤らなかったのか。

半数以上の将軍たちが英傑でなかったゆえ、
史実のような完敗に帰したと言い切ると、彼らを貶め過ぎるだろうか。

本書で採り上げられた十傑は下記の通り。
永田鉄山、栗林忠道、牛島満、阿南惟幾、本庄繁、
山下奉文、本間雅晴、小畑敏四郎、石原莞爾、根元博。






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