2011年11月 第489冊
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檜山良昭 「大逆転日本経済沈没を救え!」 徳間ノベルス
歴史シュミレーションの檜山良昭による、
バブル経済崩壊後の日本を描いたドタバタ三文小説。
私は檜山の解かり易い文体や発想が大好きで、
彼の作品は手当たり次第収集・読破しているのだが、
この作品は、酷かった。
おそらく彼のワースト1作品で、これ以下の作品が無いことを願う。
平成6年、東京中日スポーツ新聞に9ヶ月近く連載された大作で、
ノベルス・サイズ2段構えの377ページ。
時代設定は平成6年から、しばらく経った日本経済、
おそらく平成20年前後を、想定しているんだろうから、
今、読んでいる平成23年は、まんざら遠くも無いリアルな設定だ。
日本は経済戦争にすっかり敗れ、ジリ貧になってしまった状況にある。
東南アジア諸国は発展を謳歌し、日本から学ぶものは何も無くなり、
日本へは観光や夜遊び目的で団体さんがやって来る。
旅行会社新入社員の主人公は、一発当ててやろうと、
学生時代の不動産屋新人と画策し、五百億円台の赤坂ビルを
六百五十億円で売りつけてやろうと目論む。
台湾の経済視察団体を案内する中で、旅行会社の実態や
官僚、不動産、土産店など、現代日本が海外で行ってきた悪行を、
逆に外国人からされる過程で警告している。
素材や裏事情など小さな素材の数々は読むべきものがあるのに、
それをドタバタ喜劇でスポーツ新聞向けに纏め上げたのが敗因。
「日本経済沈没を救え」だから、政治家や大企業社長が
あの手この手の国策で、外国に立ち向う内容の方が、
檜山には、良い作品が書けたんじゃないかと思う。