2012年04月 第506冊
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黒川博行 「八号古墳に消えて」 創元推理文庫
歴史が大好きだが、古代史は全く興味が無い。
飛鳥奈良時代どころか、平安鎌倉時代辺りまで興味が持てない。
小中学生の頃、吉川英治「新平家物語」の読破に苦労したり、
大佛次郎「源実朝」を読んだりと源平期は親しんだのだが、
なぜか好きにならなかった。
生まれながら身分が確定しているのが、
面白く感じない原因だと思う。
さて、本書は考古学界を舞台としたミステリー。
古墳を研究している関西の大学、考古学研究室や学界の
ドロドロした裏事情を絡めている。
古墳研究のミステリーねぇとナナメに構えて読み始めたが、
これが予想以上の面白さ。
捜査してゆく刑事2人組はズブの考古学素人だから、
古墳とか考古学の世界も刑事達の捜査過程と一緒に学んで行ける。
学界派閥やどうやって教授や所長に引き上げてもらえるのか。
研究実績を上げるために地元の考古学マニアを組下に組織化したり、
捏造まがいから禁断の古墳盗掘まで、ミステリーと絡めつつ、
これでもかと様々な裏事情が繰り広げられる。
アカデミック。サスペンスとして一級で、面白すぎるっ!
黒川博行の学界ものは「文福茶釜」(贋作モノ)以来だが、
こういったモノを書かせたらトコトン面白い。
彼の著書はこれで6冊目だが、ハズレが一冊も無い。
全作品読破を目指し、これからも読んで行きたい。