2012年04月 第508冊
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東直己 「立ちすくむとき」 ハルキ文庫
二百ページに24の短編が詰まった、連作短編集。
一編十ページも満たないわけで、どれもこれも物足りない。
数ページの中でも、キラリと光る掌編を書ける作家もいるが、
東は短編より長編で生きる作家だ。
上記が感想の全てですが、東の大ファンなので、
もう少し蛇足を連ねます。
例えば、未読の作家で、少し関心があるとき。
いきなり全十巻の大シリーズものなんて、
いくら話題でも手を出しづらい。
そこで思いつくのが、薄い短編集。
著者の文体やタッチが味わえるし、失敗しても被害は少ない。
本書「立ちすくむとき」は、まさにそんな「東入門」として
格好の餌食になっていそう。
そして、本書で「東を始めて試し読みしてみた人」たちは、
ほとんどが彼のシリーズものに進むことなく去ってゆくでしょう。
ハルキ文庫からは、東の「榊原健三」シリーズという
血湧き肉踊る大推奨本があるのですが、
それを読む人が減ってしまっているでしょう。
既に、東ファンを自認している人は、
彼もこんな作品を書くんだなと読んでみるのも一興です。