2012年05月 第521冊
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茂木健一郎/江村哲二 音楽を「考える」 ちくまプリマー新書
脱税をした茂木の音楽論なんて・・・というのが読むまでの考えだった。
共著である江村哲二という人も知らないので、買ってから数年、積ん読だった。
ところが、読み終えて。
江村哲二という人が異色の作曲家で、どんな音楽を書いてるんだろうと
ネットで調べた。まずはウィキだ。
しかし、その内容に呆然とした。
本書は2007年春に書かれ、同年5月初版されている。
また、江村哲二は2007年6月11日死去、となっている。
なんと、本書で対談された数十日後、
作曲家江村氏は、急逝されていたのだ。
本書では、江村氏の作曲に対する熱い想い、
これからの野望、そして音楽への希望。
幼少期より音楽に親しみ作曲家を夢見るが、あえて大学では物理学を専攻し、
作曲学は独学で習得。私も作曲は、ある一定期以降は独学の方が良いと思う。
理系の学者として進みつつ、作曲は独力で推し進めた。
指揮者大野和士の支持を得、いよいよこれから躍進を
期待されていた最中だった。
一冊の本で深い感銘を得、この人は面白いなと感じたばかりなのに、
その人は、その著述の数十日後に急逝していたなんて。
こんなに驚いたことは久しぶりだ。
茂木が専門の脳科学に、土俵をずらそうとするのは仕方ないとしても、
江村氏の音楽談義は、なかなか読み応えがある。
それがゲンダイ音楽界の渦中にいる人としては、
かなり大胆で挑戦的な発言も多く、茨の道だなと感心した。
それだけに、こういった人がいなくなってしまったのは、
あらためてクラシック音楽界にとって、残念でならない。
茂木に対して偏見がある人も含め、一読をお薦めする。