2012年06月 第523冊
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長山靖生 「偽史冒険世界」 ちくま文庫
序章:理想的な「真実」は存在するか?
第1章:どうして義経はジンギスカンになったのか?
第2章:なぜ「南」は懐かしいのか?
第3章:トンデモ日本人起源説の世界観
第4章:日本ユダヤ同祖説と陰謀説のあいだで
第5章:言霊宇宙と神代文字
第6章:竹内文書は軍部を動かしたか?
歴史は教科書に載っている事すべてが正しいのでなく、
それが現代の主流・一般説となっているだけ。
そりゃ鎌倉幕府は源頼朝が開幕したし、秀吉は太閤まで昇り詰めた。
大きな流れは疑いようが無いが、小さな事象や後日談は
各種各説が水面下で並行している。
そんな「異説」を紹介しようというのが本書ではなく、
明らかに「偽史」と判っているのに真実だと力説された事象を
紹介したのが本書。
かなりの「とんでも本」であり、こんな偽史があったのか
と興味深く読める。また、こういった偽史を探求する
マニアぶりも面白い。
第1章の義経は誰でも知っているように、
奥州藤原家に滅ぼされず北方や大陸に逃げ延びたとか、
時間が合わないがジンギスカンになったとか、
様々な伝承が残っている。
なぜそんな夢物語みたいな伝承が生まれたのか、
それがいつ頃から言われたのか、明治の文明開化後はどう変遷したのか、
といった風に論じられてゆく。
第2章の「南」とは、戦前の南洋冒険譚について。
最近も海賊漫画が大人気だし、欧米では海賊映画は
まず外れないと言われるように、南の島への大冒険は大人気だ。
私は、暑そうだし、襲われそうだし、
南には全く興味ないんですが、世間では南が人気だそうだ。
特に戦前の児童向け雑誌では南洋冒険モノは大人気だったそうで、
それだけ未知の世界が広がっていたからだろう。
ちなみに竹内文書って、ご存知ですか?
何かの本でチラと見た気がしたんですが、
これほど驚きの文書とは思いませんでした。
かなりなものなので、誰も真正面から採り上げにくかったのでしょう。
こんなに赤裸々に書いちゃって大丈夫なの?と心配してしまいます。