2012年09月 第545冊
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真保裕一 「連鎖」 講談社文庫
今こそ本書のテーマ「放射能汚染食物」で新作が出て欲しい、
小役人シリーズ第1作。
江戸川乱歩賞受賞作(第37回)、単行本1991年初版。
1991年初版から解るように、放射能と言っても日本の原発事故でなく、
チェルノブイリ原発事故を採っている。
チェルノブイリから汚染された東欧の食品を、すり替えや積戻し、
横流しなど様々なテクニックを駆使して格安で仕入れ、
そこから利益を貪ろうとする業者達。
それを告発した雑誌記者は謎の自殺未遂を遂げ、友人?の主人公は
元食品Gメンということもあって捜査(内偵)に乗り出す。
多くの登場人物が十人十色の思惑で動くので、
それが想定外に連鎖してしまう。
だが、ミステリとしての仕掛けを盛り込みすぎ。
汚染食品の密輸入の構造や薀蓄は読み応えあるが、
主人公は友人の妻と不倫関係だった裏目があったり、
途中から活躍する保険調査員といい雰囲気になったりと、
ネタを作りつつどっちつかずで終わるのも残念。
「奪取」や「ホワイトアウト」が代表作なのですが、
本書が文庫第1作なので、読みました。
約400ページですが読破には、たっぷり時間が掛かり、
お腹いっぱいといった気分です。