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2012年10月 第546冊
樽見博 「古本通」 平凡社新書
樽見博 「古本通」 平凡社新書

著者は日本古書通信を永年編集してきた古本業界人。
古本屋さんとか業界紙の人による「古本」本が増えているが、
それだけ古本の裏側に興味のある人が多いのだろう。

しかし、概して言えることが、こういった人々の文章は面白くないの。
取り上げている題材は良いのに、どうして大量の本を読んでいるのに、
文書が面白くないの?

東海林さだおとか椎名誠を極め抜いて読んでいるわけじゃないから、かな?

古本とひとくくりに言っても、そのジャンルは多種多様。
初版本にこだわったり、文学それも現代詩とか批評に特化したり、
芸術評論を体系的に集めたり、楽譜だって画集だって本の一ジャンルだ。

我こそは古本を漁っています、という人は得てしてこういった特化が多い。
本書の著者も例として花田清輝(文芸批評)、近藤芳美(歌人)、
杉浦明平(小説・批評)、上野省策(芸術)などを挙げており、
私と全然観点が違うんだから著者の感性と合わないのも致し方ない。

そうは言っても、古本業界の裏話は純粋に面白い。
業界の仕組、値段の決まり方、古本探しの生態、蔵書処分法など、
フムフムと一読の価値は高い。

そして、最後は古本業界の未来についてだ。
本書初版は2006年なので、本屋が本格的に淘汰され始める初期だろうし、
電子書籍もまだ話題になり始めたばかりかな。

私も古本が大好きなのだが、その理由は昔の本の方が
思い切ったことが書かれているため。

現代は様々な批判や指摘が激しく、タブーは避けているような気がする。
タブーに真正面から挑んでいる大袈裟な題名本もあるが、そういった本は
逆に腰砕けも多い。

昔の本にはまず一本ドーンと書きたい本筋があって、その周辺にタブーが
引っ掛かってもしっかり書くし、タブーがタブーとなった由縁まで
普通に書いてしまう。

タブーが本来なんだったのか、いつからタブーとされたのか、
何故そうなったのか。

本来のあったままの事実を知り、それを意図的に
採り上げたり曲げたりして変貌してゆく経過を知る。

そこでタブーについてどう思うか、はじめて自分が試される。
しかし現代は、そんなこと忘れちまった方が身のためだと、
それさへ誰も言わない。

昔の本の方が面白いので、古本を探すしかない。
新品本で重版が出ていれば問題ないが、文庫新書が
いとも簡単に廃版してしてしまう現況が、私を古本に走らせている。






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