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2012年12月 第554冊
檜山良昭「関ヶ原の戦い」角川書店
檜山良昭 「関ヶ原の戦い」 角川書店

檜山良昭が、挑んだ戦記実史もの。
ただし、ひとひねりせずにはいられない檜山良昭。

未来の歴史調査員が、タイムスリップして関ヶ原合戦の十年後に
インタビュー調査する、という変テコな設定。フツーに書けばいいのに。
調査員が失態をしでかして歴史を変えてしまう、トンデモ展開を
今か今かと期待して読んだんですが、さあどうなるか?

新書版より一回り大きい縦18センチの中は2段書き。
これが548ページも続くんだから、文庫なら上中下全3巻といった大作。

いくら、丁髷着物が腰に刀差してタイムスリップしたからといって、
未来から来ましたと打ち明けたら、「曲者!会え、出会え!!」
と、一刀両断されて実際は終わりかと思う。

しかし、そうなっては話は進まず、本書タイムスリップした調査員は、
どうにか家康の参謀格本多正純に信じてもらえ、話が始まる。

ここで不思議なのは、聡明な正純がタイムスリップで未来から
調査員が来たと理解することでなく、そんな「未来を知っている」調査員の
チカラをなぜ使おうとしないのか?

正純は多くの同僚武将を紹介し、調査員の調査を助けてやるのだが、
もし自分が正純だったら、調査員を拷問してでも有益情報を引き出すと
思うんだけど。そうすれば、正純の悲惨な末路が予言されるだけでなく、
そうなる前に、手を打つことはいくらでもある。

話は逸れた。
本書は関ヶ原合戦に多くを割いているが、合戦に至る人間関係や東西の状況、
特に伏見城攻略戦あたりからネチっこく精密に描いており、関ヶ原前から
その合戦までを綿密に知るには非常に有益。

ただしタイムスリップ調査員という、どうでもいい道化師がうろちょろするので、
どこまでが実話で、どこからが創作なのか微妙で、純粋歴史小説に徹底した方が
良かった。

イフ物大家の檜山氏には、何が何でもSFを絡めて欲しいという編集側の
意向が働いたのかもしれない。

ともかく、折角の大著なのに変に小細工したばかりに、
残念なものになってしまった。

ちなみに、本書続編と思われる「大阪の陣」という書も書かれている。
本書のように調査員目線の記録物なのだが、歴史に手を加えてくれないなら、
調査員などいない方がいいのだが。






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