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2013年2月 第561冊
椎名誠「哀愁の町に霧が降るのだ」新潮文庫椎名誠「哀愁の町に霧が降るのだ」新潮文庫
椎名誠 「哀愁の町に霧が降るのだ」 新潮文庫

いやあ、実にいい。
椎名誠の自伝風青春文学三部作の第一部です。
私は「新橋烏森口青春編」(第二部)から入ったので、
それを読んだ後、本書を買っておいたんですが、
上下二巻という重さから数年間放っておいたんです。

椎名誠を一冊でも読んでいる人ならお解かりでしょうが、
上下二冊だろうが三冊だろうが、その長さは全く恐るるにあらず。

スーパーエッセイといわれる軽妙口語体で、スラスラ・サラサラ読めます。
それでいて彼が作家として成功したのは、描写が実にしっかりしている。

スラスラのサーラサラと書いているように感じさせつつ、
情景描写や心理描写はしっかり書き込んでいる。
小難しい文章文体は全く無く、スラスラっと書きつつ
しっかりと伝えていく。実に見習うべき筆法なのだ。

著者が不本意ながら千葉の高校に入ったあたりから
物語りはスタートし、しょっちゅう現代の現実に舞台は戻り、
回想録を執筆してゆく劇中劇のような構成にもなっている。

ケンカに明け暮れた高校時代を経て、仲間四人での
小岩共同生活を主軸にハチャメチャな青春群像劇と
いうところでしょうか。

こういった小説を数行のあらすじに纏めてしまうと
見もフタも無いのですが、一度は憧れてしまう共同生活が
懐かしく描かれていきます。

食事当番や便所掃除、布団干しやお金の管理など、
何度も破綻しつつ話し合って酒盛りを続けていきます。
洗濯の話が最後まで出て来ないので、
ほとんど洗濯していないのが気になりました。

この合法磊落な生活なのに凄いと思うのは、
この四人の中から椎名誠が生まれ、弁護士が生まれ、
イラストレーターが生まれるのです。

酒ばっかり飲んでどうして?と思うんですが、
飲む時は飲むけど、ギャンブルや女には関心が低いんですよね。

しかも弁護し目指して木村のとうちゃんが脱退してからは、
椎名は就職するんですね。

そこから先は「新橋烏森口青春編」で描かれるわけですが、
次は第三部「銀座のカラス」を早めに読も、と思っているわけです。







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