2013年5月 第578冊
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杉本章子 「妖花」 文春文庫
時代小説、その中でも市井ものといわれるジャンル。
このジャンルなら、藤沢周平を一番多く読みましたが、
ほろりとする作品が中心でした。
ところがこの杉本章子は違う。
最後の最後まで、主人公に明るいラストを残すかのように期待させといて・・・
落とす。
この短編6編は、ほとんどラストで暗澹たる気持ちにさせられます。
でも、こういった展開も必要です。
起承転結、様々な流れがあって、最後どうなるのか。
ハッピーエンドが金科玉条のごとく守られていたら、
いくら中盤で手に汗握っても「でも、最後は丸く収まるんでしょ?」
と、ハラハラし切れない。
その点、本書は別の意味で問題。
哀しい女、悲しい話、そしてカナシイ結末。
もしかしたら・・・と思いページをめくり、
その望みを断ち切られる。
一種の残酷ものだと思う。