2013年6月 第588冊
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角田光代 「幸福な遊戯」 角川文庫
3編からなる初期短編集。
表題作は海燕新人文学賞(1990年)、六十ページ弱の短編。
男2人に女1人のルームシェア生活。
男女が一つ屋根に暮らして波風立たないわけも無く、
事が起こったからこそ、女は安定してゆく。
そんな生活に男の方が変化をきたし、
一人去り、もう一人も去ってゆく。
滅多にありえない設定だし、こんな女性も珍しい。
設定に全く共感できず、展開もうなずけない流ればかり。
どうしてこんなものが、デビュー作にして新人賞を取ったのか。
著者はのち、直木賞作家となったが、最新作は面白いものを
書いてるだろうか?
お次の「無愁天使」は九十ページ未満の中篇。
これは表題作より輪を増して酷く、粗筋をなぞるのも面倒。
ところが最後の短編「銭湯」が不思議に面白かった。
前2作に辟易し、これじゃ感想も書けないし、
途中放棄したいと思いつつ読み始めたが、これなら面白い。
受賞作を標題に据えるのは鉄則だろうが、今は無き海燕新人賞だから
読もうと思った筈もなく、「幸福な遊戯」なんて抽象的な気取った書名より
角田光代「銭湯」の方がインパクトあるのに。
大学演劇に身を捧げ切ることもできず、
惨めなOLに日々鬱々と生きる主人公。
そんな彼女が毎日通う銭湯での脳内会話が、愚痴だらけで面白い。
大学演劇部なんて、興味持たなくて良かった〜、と思える。