2013年7月 第592冊
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古川愛哲 「江戸時代の歴史は大正時代にねじ曲げられた」 講談社アルファ新書
ショッキングな書名なので、既読の方も
いらっしゃるのではないでしょうか。
明治史に詳しい方は、すぐに気付くはず。
帯刀や敵討ちがあたりまえだった江戸時代から、
立法国家に変貌せんと明治政府が採った士族への
穏健事勿れ思想。
荒々しい考えの多くを否定し、禁止した明治政府。
一等国の仲間入りをしたものの、欧米に肩を並べんと背伸びするが、
猿真似と白眼視され、世界から孤立していった日清日露以後の日本。
一国で片意地張って、も一度無骨武辺に傾いてゆく大正日本。
お国のためなら、武力こそ正義と、江戸の士風を懐かしみ、
国民を鼓舞するような逸話や思想が、どんどん持て囃されました。
書名は、そんな時代とともに変遷する思想風潮を取り上げています。
明治から大正にかけての思想変遷史だったら、読み応えあるんだけど、
本書は、まさに「雑学」。
これでもか、これでもかと江戸時代の雑学が、投下されます。
江戸庶民の夢のない生態や、江戸の町の実態から武家の裏側まで。
著者は放送作家をしていただけあって、時代劇の
矛盾や上っ面だけを、苦々しく感じていたのでしょう。
実際の江戸時代の生活も、苦労と仕来たりと貧しさで
大変だったんだ、と伝えたいようです。
読みやすいんですが、あれもこれもの大盤振る舞いで、
もう少しテーマを纏めるか流れを作るかして、
「雑学」感を、なくした方が良かった。
でも、面白いことは面白いよ。