2013年8月 第601冊
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竹田いさみ 「物語オーストラリアの歴史」 中公新書
中公新書の「物語○○の歴史」シリーズも本書で十冊目。
アメリカ、中東、ドイツ、アイルランド、韓国、スペイン、バルト三国、
ウクライナ、スイス、そして本書オーストラリアと読んで来ましたが、
一番、面白かったのはウクライナ。
本と云うのは、読んでみないと判りません。
オーストラリアは、どうだったかと言うと、
これが意外と、しっかりと書かれていた。
まず開拓、移民によって成立した国であること。
白豪主義と云うイギリス白人を中心とした欧州白人中心で、
国民を、増加・発展させたかった。
ところが、東アジアの南方に位置するため、中国や東南アジアから、
わんさか移民したがるのが自然な流れ。もちろん、日本も一旗挙げたい。
そんなアジア人の押し寄せに、どう対抗するかの歴史でもあった。
イギリスの植民地として、成立したオーストラリアですが、
アメリカのように独立戦争を起こして、ある時からスパっと、
独立したわけではありません。
アメリカに独立された英国は、残る金の卵、
オーストラリアやカナダを、大事に大事に扱います。
自治権が欲しいと云われれば、認めるし、
海防を強化して欲しいと云われれば、艦隊を送ります。
しかし、ボーア戦争や二度の世界大戦へ派兵して行く中、
イギリスの力も弱まり、戦後は、なし崩し的に独立へ進みます。
読んでみれば、「なるほどなぁ」と思うんですが、
こうやって、きちんと時系列に押さえておくと
オーストラリアの歴史が深まります。
また、仮想敵国を、どう置くかも重要でした。
東アジアの大国と云えば、ロシア。
これは、親分のイギリスと共通しているわけですね。
ところが日露戦争後、じわじわと強くヤバくなってゆく日本があります。
また、どこへでもチャイナ・タウンを作り、華僑する中国へも要注意です。
そんな、人知れぬ苦労をした南の島の歴史でした。