2013年8月 第602冊
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中野雄 「丸山眞男 音楽の対話」 文春新書
読むまでは、正直、億劫でした。
まず、丸山眞男、だれ?
東大OBや学問の世界からしたら、無知すぎるんでしょうけど、
私は、丸山眞男さんを知りませんでした。
ちなみに、彼のプロフィールを少々。
1914年生まれ。1950年東大法学部教授就任だが、専門は日本思想史。
1971年、東大を早期退職したが、名誉教授として活躍し続け、1996年永眠。
本書は、丸山眞男を敬愛する弟子による恩師礼賛本。
しかし、読んでみればわかる、かなり良い。
丸山の思想史は、最後にちょっと出てくるが、
ほとんどが、彼との「音楽の対話」。
丸山の専門は思想史であったが、それと並びうるほど
クラシック音楽への深い造詣、その嗜好や思考を
解りやすく再現している。
ワーグナー、フルトヴェングラー、ベートーヴェン。
この3つが話のほとんどで、いかにも戦後クラシック・ファンの王道、
みたいな嗜好だが、フルヴェン・フルヴェンと信奉している人達の精神が、
よく描かれている。
著者中野雄の落ち着いた文章がよく、銀行からケンウッドに転職し、
音楽プロデューサーになった異色の経歴だが、さすが東大法学部卒だけあって
文章が解りやすく頭に落ちてくる。
丸山の音楽嗜好思想を丁寧に辿りつつ、自身の考えや歴史的背景なども
添えられ、大変知的好奇心が満たされた。