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2013年8月 第604冊
譚ろ美 「阿片の中国史」 新潮新書
譚ろ美 「阿片の中国史」 新潮新書

著者名:譚ろ美の「ろ」は、王偏に路と一文字で綴る漢字です。
著者は、中国人の父と日本人の母を持つ。

父方の大伯父は中国共産党創設者のひとり譚平山であり、
母方の祖父は、旧日本陸軍中将だったという。
まさに数奇な巡り会わせで産まれた、日本と中国の架け橋のような女性だ。

この本は、本当に眼が見開かれるような感慨を抱いた。
太平にまどろんでいた清と、徳川日本。

どちらも長期政権は腐敗し、階級は固定化し、
喫緊の対応が出来ない状況にあった。

ところが西欧列強は、まずインドを攻略し、東南アジアを経て、
夢のような大国:清を見つけてしまった。

清から輸入したティー(茶)が、英国をはじめ欧州で爆発的に愛好され、
英清貿易は、英国の貿易赤字をどんどん膨らませていった。

清は東洋の中華、中央の華であり、対外に影響を与える物質と
文明はあっても、対外から仕入れる必要はなかった。

もう少し経てば、軍艦や飛行機を望むんだろうが、
この時は輸出はしても輸入しなきゃいけないほど望むものは
国外に無かった。それほど清は太平満腹だった。

一方、インドでは阿片が栽培されていた。
東洋では、漢方薬として阿片を利用するクスリだったが、
これに、中毒性と快楽性があることに英国は着目。

インドで格安に阿片を栽培し精製し、中国に高値で売りつける。
そのカネでティーを輸入すれば、貿易赤字どころかお釣りが
くるほど貿易黒字に転換する。

中国人の阿片中毒なんて、知ったこっちゃない。
欧州の恐ろしい貿易が、清を襲うのだ。

この歴史過程が実に解りやすく、多面的に、なおかつ興味深く描かれてゆく。
心に残った読書となった。







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