2013年9月 第607冊
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真保裕一 「奪取」 講談社文庫
「連鎖」が世評ほど、感銘受けなかったので、
恐る恐るこの文庫千ページに挑戦したのですが、
まあ 、面白いこと。
こういった本を面白いと思うのは不謹慎ですが、
偽札づくりのピカレクス小説です。
サラ金に手を出し、ヤクザから無理難題を
吹っかけられた親友を助けるべく、
偽札をつくるはめになった主人公。
犯罪技法の着眼点がなかなかで、
今から二十年前ならではのストーリーですが、
十分面白い。
最初の偽札づくりは成功するのですが、
犯罪としては失敗します。
親友をヤクザに攫われ、ヤクザから救うために
警察に密告してしまう。そして親友とヤクザは捕まり、
親友は偽札づくりの実行犯として刑務所行き。
ここまでのストーリーでも十分なのですが、
そこから再起を図る第二編と続く。
大事な仲間が殺され、更なる再起を図る第三編と、
グイグイ読ませてくれます。
ラストは様々な感想があることでしょうが、私は不満でした。
あれだけの苦労をしたんだから、あんな信用できないヤツに・・・
と思うとスカっとはしません。
それでも、読んでいる間の、読書そのものは堪能できます。
いろんなところで絶賛されている本書ですが、これは掛け値なしです。