2013年9月 第609冊
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松本清張 「隠花の飾り」 新潮文庫
清張の短編11編。
どれも二十ページちょいの制限の中、出来る限り上質のミステリを
描こうとしている姿は、さすが松本清張。
もっとも面白かったのは、解説の阿刀田高。
解説に副題が付いてまして、「おそれ多くも率直に」。
ミステリの王様みたいな清張の短編11を、バッサバッサと斬っています。
「十一作のうち、さすが清張さんの丸印が五作、
平均点前後の△印が三作、くらいだろうか。」
ここで、読者はハッとするわけです。
11−5−3=3
平均点前後にさへ至らない駄作が、3点も混じってますよ、
この短編集は!
なんという大胆な解説。
しかも、清張を阿刀田が解説し、バッテンを3作も付ける。
こうでなくちゃ、解説なんだから。
さすがに、古過ぎるミステリなんで、今じゃ通用しない話が多い。
推理小説に多い典型が、携帯電話が無いすれ違い。
今なら携帯電話で、いくらでも意思疎通を瞬時にすることによって、
互いの勘違いや誤解などが、解きほぐせるのですが、
ちょっと昔までは、コレができなかった。
それゆえの喜劇悲劇を描いた小説は、事欠かず、
いずれ、全く理解出来ない小説になってゆくのでしょう。
それこそ、テレパシーやテレポーションが、小学生でも買える機材に
なってしまったら、片思い恋愛小説や、密室殺人事件なんかも
ありえなくなるんでしょうなぁ。
現に、最近の実犯罪では、全国あちこちに散りばめられている防犯カメラから、
犯人の後姿や逃走車のナンバーなんかが、割り出されてますもんね。