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2013年10月 第610冊
藤沢周平 「密謀」上下 新潮文庫
藤沢周平 「密謀」上下 新潮文庫

上杉謙信の後継者、上杉景勝と寵臣の直江兼続。
この二人の豊臣勃興期から関ヶ原敗戦までを描く。

戦国時代小説といえば、信長秀吉家康だが、信玄謙信早雲元就だってある。
ただし、謙信以後の景勝&兼続は珍しく、最近の慶次郎&兼続の人気もあるが、
今から三十年前に周平が書いたことを考えれば貴重な一冊。

初期の作品か?と思うほど流れがカクカクしている。
史実に基づいたストーリーと仮想の忍者(草)の動きを交互に描くが、
圧倒的に忍者が面白い。

これをまとめると、周平は史伝が不得意で、時代小説は面白いことになる。
景勝と兼続の密謀は詰まらないが、忍者達の活躍や剣士に成長した少年の
行く末はなかなか楽しめた。

関ヶ原にて。
上杉家は会津で反徳川を挙兵し、東軍(徳川)を会津征伐に向かわせる。
会津領に入ったところで袋叩きにする計略を用意していたのに、
早すぎる西軍(石田三成)の侵攻に東軍は踵を返す。

もし上杉と石田が緊密な時間計算で行動出来ていれば、
会津で家康を身動きできない泥沼化に陥れ、西軍石田が箱根あたりまで
押し寄せえた可能性もある。

そうなれば天下の日和見は、西軍有利と見ただろう。

また、家康が会津から関ヶ原へ反転した際、どうして上杉は会津から
追撃できなかったのか。後背の伊達政宗、宿敵の最上征伐もあった。
それでも最上なんて寡兵であしらい、数万の本隊は家康軍の追撃で
西走を阻むべきだった。

関ヶ原の合戦は短くとも1ヶ月、膠着状態になれば数ヶ月は
天下の大軍が関ヶ原に貼り付けになる。

その機に乗じて、東北では上杉が席巻し、九州では如水が暴れまわる。
そんな戦国時代を混ぜ返すようなリストラクチャーが起こりえたかもしれない。
兼続と如水なら、そんな波乱も成し得ただろう。

まさか関ヶ原がたったの一戦で決するとは思わなかったわけで、
兼続の読みは完全にハズレてしまう。

それが上杉120万石を30万石へ4分の1にしてしまう。
さぞかし悔しかっただろう。

その後、更に15万石に減封されてしまう、上杉の悲劇が始まってしまう。







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