2013年11月 第618冊
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大沢在昌 「無間人形 新宿鮫4」 光文社文庫
これ、また面白かった。
新宿鮫シリーズの第4作だが、今まで読んだ4冊とも、全て面白い。
今更ながら、こんな面白いものを読まずにきた自分に苦笑い。
今回は、覚醒剤にからむ犯罪。
新宿・六本木界隈で、一粒500円とリーズナブルな
キャンディが未成年達の間で、浸透しだしていた。
ごく微量ながら、覚醒剤が混入されたキャンディは
どの国の産地かも判らず、新宿署の鮫島警部を苛立たせる。
一方、地方財閥の分家筋に野心を抱いた兄弟がいる。
彼らがキャンディ密造の大元なのだが、なぜ彼らが
地方財閥の一翼にありながら、密造に手を染めたかが謎を呼ぶ。
偽名を使って新宿のヤクザに下ろし、密売を繰り広げる兄弟だが、
鮫島らの活躍によって、売人を逮捕したことによって、
糸口をつかんでゆく。
本書シリーズの面白いところは、犯人探しでない。
追う方は警察、悪いヤツラも並行して描かれてゆく。
ただ、なぜそんな悪事を働いているのか、鮫島が
どうやって追い詰めるのか、犯人がどうやって逃げ切るのか、
または逆襲が成功するのかが、スリリングなのだ。
ただし、鮫島警部の恋人が凶暴な男に捕まり危機一髪となる。
しかし、シリーズ4作ともなるとこの「ヒロイン」が、今さら
汚される筈もなく、どうせギリギリのところで助け出されるんだろ、
と先が読めてしまうのが、残念なところ。
直木賞受賞作であり、著者の地位を不動とした名作。
不満な点もあるにはあったが、読書中は必死になって読み続けた。
いま、大沢氏の他のどのシリーズを買い込むか、検討している。