2014年7月 第656冊
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司馬遼太郎 「燃えよ剣」(上下) 新潮文庫
中学生の頃、柴錬の「御家人斬九郎」を読んで
厨二病になった頃を思い出した。
本書「燃えよ剣」は、まさに中学生の必読書で、
子供の頃に、こういった本を読むと人生が変わると思う。
柔軟な脳味噌を持つ中学生には、「竜馬がゆく」のような
開国前進派からみた幕末維新史を読む方が尊ばれるが、
敢えてその時代、時代の流れに逆行した男たちを読んでこそ、
維新を考えさせる力がつくと感じた。
司馬氏は、この「燃えよ剣」と名著「竜馬がゆく」を
ほぼ同時並行で執筆したそうだ。
ここらへんが面白いところで、歴史を両面から見る一助となる。
日本を変えるんだ、世界の中の日本を引き上げるんだ
という前向きな考えの一方、我が藩が主導権を握りつつ
朝廷日本を牛耳ってやろうという浅ましい根性。
そのあたりを、竜馬も歳三も本質において見抜いている。
徳川から薩長に、主導権が移るだけでは意味も無く、
世界に伍してゆける日本を目指そうとする竜馬、
新撰組副長して土佐・長州を斬り過ぎた歳三は
喧嘩だけを拠りどころに、北海道まで転戦してゆく。
「燃えよ剣」は、新撰組の流れを基調として描かれてゆくが、
鳥羽伏見の戦いで京阪から落ちてゆく。
その後、半生(流山あたり)からこそ土方歳三の真骨頂で、
個々の戦いでは負けてないのに、大きな歴史の流れには
勝ちようもない人生が実に悲劇的で壮大だ。
中高生で司馬遼太郎は結構読んだが、今一度彼の著作も読もうと思った。