2014年8月 第660冊
-
大沢在昌 「新宿鮫5」 光文社文庫
本書の正式書名は「炎蛹」。
フラメウス・プーパと読む。
新宿鮫シリーズ第5巻まで読んできて、一番面白かったのは第2巻だった。
今回の第5巻は夏旅のお供として、長距離移動中も退屈しないよう
新宿鮫と東直己を選んだのだが、本書は今一歩。
て言うか、過去5巻中もっとも読み切るのに苦労した。
ミステリとしては上の下かもしれないが、それまでの鮫4作と比較すると、
期待値未満となった。
南米のお土産品、藁細工に極悪害虫のサナギが
大量に付着していたことが発覚。
防疫技官とコンビを組んで捜査が始まる。
新宿鮫の面白いところは、複数の事件が同時進行するところ。
外国人娼婦殺し、連続放火事件、本来鮫島が捜査していた外国人間抗争。
これらが収斂してゆくのだが、同時並行が多いため視点が散漫となり、
日本中の米が全滅しかねない害虫捜査に、ハラハラできないのです。
盛り込みすぎ。
目先の殺人や放火を無視するわけにいかず、
でも、極悪害虫が羽化してしまっては取り返しがつかない。
いろんなことが勉強になって、面白いには面白いが、
ちょっと取材詰込みになってしまったような、残念なような。