2014年9月 第661冊
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東直己 「疾走」上下 ハルキ文庫
夏旅で読んだ、もう一冊。
こちらは大正解の面白いアクション・ミステリーだった。
あずまファンなら大好きな、榊原健三シリーズ第3弾。
「フリージア」「残光」と続く、元殺し屋。
今は山奥で木彫り人形を作って、自給自足の隠遁生活。
この主人公榊原さんは、五十代の高倉健を想定したような孤独なナイスガイ。
殺人マシーンでそのアクション・シーンは鳥肌モノ。
若き日の榊原さんは、組のヒット・マンとして大活躍。
しかし、一生想い続ける女性が出来たことで、
最後の大仕事と引き換えに足を洗う。
女性と結ばれてハッピー・エンドと誰しもが思っていたが、
榊原さんは違った。
こんな俺と一緒にいちゃいけねえ、愛する人は堅気の世界に戻るべきだ。
二人は涙をこらえて別れる。
榊原さんは山へ、女性は故郷へ戻り一般サラリーマンとの
平穏な結婚を選び、男の子を出産した。
ところが、この女性と息子がいろいろと狙われる。
榊原さんの殺戮パワーを悪用したい奴等が母子を拉致ったり、
今回みたいに偶然事件に遭遇したり。
その度に「愛する人を哀しませちゃいけねえ」と
榊原さんは身を挺して戦うのです。たまんないよ、榊原さん。
2008年に出された本ですが、原発の諸問題を採り上げており、
原発・津波事故以後なら出版できなかったかも。