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2014年9月 第669冊
池上金男(池宮彰一郎) 「幻の関東軍解体計画」 祥伝社ノンノベル
池上金男(池宮彰一郎) 「幻の関東軍解体計画」 祥伝社ノンノベル

池上金男ってどんな作家だ?と思い読み始めたが、これが重厚で本格派だった。

本書は三十年以上も前の新書サイズ・ノベルズだったので、
今この作家はどうしてるんだろう?早世してしまったのか?
とウィキで調べてみると、池宮彰一郎の本名だったんですね。

池宮彰一郎とペンネームを使うまでの、貴重な本名著作だったわけです。

更に池宮のウィキを読み進めると、類似問題・盗作疑惑事件で
人生終盤は大変だった模様。

これだけの本格ノンフィクションを書き上げた男が、
晩節をかくも滲ませてしまうとは、人生、先の先は解りません。

家康や島津みたいなメジャー武将にせず、こういった関東軍とかの
歴史のニッチ分野を掘り進めて行けば、類似とか盗作とは縁も
薄かったでしょうに。

人気作家になってゆくと、どうしても売れ筋分野(戦国時代の有名武将や
幕末維新など)になってゆくんでしょうなぁ。

私は「そんな事件も教科書の片隅で暗記したなぁ」程度の題材の方が
好きなんですが、本の売れ行きはサッパリになるんでしょうね。

さて、本書。
副題「リットン報告書を奪取せよ」が全てです。

満州事変を調査すべく、リットン調査団が中国にやってきます。
日本側に不利な報告書が書かれるのか、そうであればより早く
情報を入手して対抗策を立てねばならない。

満州で無茶なことをやった自覚があるなら、大人しく反省すればいいのに、
と思うのが現代人ですが、当時は大陸進出への道を閉ざされれば、 日本はニッチもサッチモ行かなくなりそうだった。
欧米やロシアにじりじり押されて植民地化の末路を恐れた。

本書は、そんなリットン報告書をいかに盗み出すかが、
あっという技法で挑戦される過程が描かれ、
息詰まるスパイ小説であり、冒険活劇である。

また、満州事変から日中戦争に引きずられてゆく歴史的背景や、
松岡洋右の国連脱退宣言など、どうしてそうならざるをえなかったのかが
上手く描かれている。







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