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2004年08月 第36冊
安西篤子 「不義にあらず」

安西篤子  「不義にあらず」  講談社文庫

武家妻女もの全9編。
辛く悲しい中にも一筋の光が見える山本周五郎や、厳しさの中にも優しさが
滲む藤沢周平といった、武家ものは最後の最後では光が覗く。

しかし、この安西さんには、「救い」が全く無い。
これは意図的に、根深い思惑がって敢えて「無明」の世界を突き付けている。

「黄水仙」「夏茱萸」「紫苑」「山茶花」など、全編植物の名前でタイトルが
統一されているが、植物がもつ不思議な魔力が見事に悲しすぎる話を言い表している。
私は高校生の頃、毎日せっせと日記をつけていたのだが、
同じように題名を植物関連で統一していた。
これは、その頃から安西文学に惹かれて真似ていたのだが、
本書での凄絶さは留まる所も知らない。

あらゆる局面で、武家における女性がいかに虐げられ痛めつけられ踏みつけられたか。
女性にとっては因循姑息な武家社会を、男性諸君は知っておくべきだろう。






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