2005年04月 第75冊
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貫井徳郎 『慟哭』 創元推理文庫
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ブックオフ各店に行脚(あんぎゃ)している私ですが、
どの店に行ってもお目にかかるのが本書。
それだけ当時は大いに話題になったそうで、それさへ知らなかった私というのは、
いかにミステリを読んでこなかったかがお解かりでしょう。
昨今、宮部みゆきをはじめ、気楽にミステリをも読むようになってきて、
いよいよ面白いミステリは無いものかと探し出しているんですが、
そんな流れでこの本も読みました。
また、創元推理文庫を買ったのも、本書が初めて。
読書ワールドが広がっているような昨今です。
この作品によって、著者はミステリ界で圧倒的な賞賛を得て
作品を連発させ出すんですが、流石にそうなった起爆剤だけあって
「ああ!」と唸った作品でした。
ひとつのストーリーを読んでいたのに、
まったく時間軸の異なったストーリーを読んでたの?
最終盤で何が何やらグルグル巻きになったような感想でした。
そして少しづつ全容を把握できてきて、作品の哀しさと奥深さが
じんわりと滲み出てくる。
連続幼女誘拐事件を追う捜査一課長が主人公。
よくあるパターンは青島刑事みたいな叩き上げの現場のデカが主人公なのだが、
大物政治家の隠し子でもあり警視庁長官の娘婿でもあるこのエリート課長が、
エリートならではの苦悩と事件捜査の狭間が上手く描かれている。
非人間的な超エリートにも悩みは尽きぬようで、家庭不和・愛人関係など
無理のない設定が事件の伸展とともに絡みだしてゆく。
まだ読んでない人は、善は急げ。
ハズレなし。