2005年04月 第76冊
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白石一郎 「海将」(上下) 講談社文庫
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小西行長の前半生を描いた大作。
著者白石一郎は九州在住だった人で、九州に関したネタや海洋ものが多い。
小西行長は堺出身の商人出ですが、肥後南半分の大名になりましたし、
瀬戸内海の海上運送を得意にした海将でもあったので採り上げたのでしょう。
現在私は、海音寺潮五郎著「加藤清正」を読んでいる最中なのですが、
人物が変わるとこうも歴史の見方が変わるのかと可笑しくもあり、
そこが歴史小説の醍醐味でもあります。
小西はのちのち石田刑部につき西軍、加藤主計は
石田憎しで東軍へと袂を分かちます。
しかし、石田三成と仲が良いということが主因で
小西行長をも嫌いになっていく加藤清正。
海音寺作品に出てくる小西は頭の切れる商人あがりの男ですが、
白石一郎が描く小西行長は良いヤツです。
こんなに良い男なのに、加藤清正が気に入らなかったのは、
どちらかが実際はたいした男ではなかったんでしょう。
それぞれが少しずつ大した男で無かったのかもしれません。
小西と加藤が肥後を半々で統治していたわけですから、
歴史の歯車さへ食い違っていれば、どちらかに幾らかでも度量が広ければ、
二人の仲は強い絆で結ばれ、関ヶ原の行方も変わっていたかもしれません。
加藤清正の勇猛果敢な戦力が西軍に加味し、加藤清正による
猛烈な西軍への勧誘が福島正則へもあったれば、
おそらく家康率いる東軍は惨敗していたでしょう。
しかし、その後は、加藤・福島を中心とした武断派と
石田を中心とした文治派の内乱が避けられず、
そこに目をつけた伊達政宗や上杉・黒田・島津
なんどの夢よもう一度派が各地で独立勢力化をする...。
歴史にイフはありませんが、想像していると絶えない楽しみ方があるものです。