2005年12月 第141冊
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貴志祐介 『黒い家』 角川ホラー文庫
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第4回日本ホラー小説大賞受賞作。
貴志氏の「青い炎」に感激して新人期の本書を買ったのだが、
感想は如何?
全388ページ中、三百ページくらいまではお膳立てといった
鈍重さを感じる。
ただ、残り百ページ足らずは一気に読ませる展開が続き、
中盤まで耐えて読んだ甲斐はある。
お膳立てが綿密だからこそ終盤が生きているとも云えるが、
カットできる挿話などもあり、もう少し引き締めた構成の方が
自分は良いと思う。
生保で保全担当をしている主人公は、ある日自殺を
仄(ほの)めかす電話を受ける。
ここで主人公は自らの封印している過去を話してまで電話相手の自殺を
思い止まらせようとする。
しかし、この電話応対が主人公にとんでもない災難をもたらすことになる。
この生保マンはやさしいや、ってんで殺人鬼は主人公をカモにしようと
するのだが、主人公も生保マンだけあって理知的でバカじゃない。
パニックになってゆく心を押し静め、
必至にトラブル回避や打開策を考えてゆく。
しかしこういう時の警察ってのは、
どうしてもこういう風な反応になってしまうのかな。
桶川ストーカー事件などの教訓もあるわけだから、現在の警察は
大幅に違うと思いたいのだが、小説での警察はなかなか動いてくれない。