2006年07月 第188冊
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小松左京 『一宇宙人のみた太平洋戦争』 集英社文庫
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16編のショート・ショートと2つの短編、それに2編からなる表題作
「一宇宙人のみた太平洋戦争」と、全199ページに盛りだくさんな内容。
中学生の頃はあんなに堪能できたショート・ショートだけど、
小松左京のショートー・ショートがまずいのか、自分にとっての
ショート・ショートが陳腐になんたのか、今一だった。
表題作「一宇宙人のみた太平洋戦争」も題名から想像できるように、
高見の見物のような日本史鳥瞰図といった塩梅で、もう一工夫が欲しい。
いま、小松左京は日経新聞の「私の履歴書」で
自伝連載中(06年7月現在)だが、
今の文章の方が円熟味と自由闊達でよほど面白い。
この「私の履歴書」はモノ書きによる自伝と
そうじゃない素人の自伝では雲泥の差が出てキツイのだが、
やはりモノ書きの面白さは大きい。
たまに面白いものを書く人もいるが、そういった人は文も面白いが
歩んできた人生そのものがハチャメチャなためだろう。
話は戻って本書にある短編「正午いっせいに」は、
時代を感じながらも異色な作品。今となっては夢見たいな話だが、
ある活動家組織が正午一斉に革命行動を起こそうという展開なのだが、
いつまで経っても何年立っても正午数分前なのだ。
そのじりじりとした展開と心境、活動決起に至らない歯がゆさなどを描く。
こんな話も昔、といっても数十年前にはありえたんでしょうね。