2007年05月 第214冊
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宇神幸男 『消えたオーケストラ』 講談社文庫
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宇神氏の音楽ミステリー全4幕のうち第2幕。
前作「神宿る手」の登場人物が、またまた大事件を起こす。
前作ではかなり気負った所だらけでしたが、
今回はブラ2のように肩の力が抜けて、サラリと書かれていつつ、
結構楽しめた。
書名を見ると、18世紀頃まで実在した欧州のオーケストラが
どのような事情で楽団解体したのか、なんて風にも想像できるし、
そんな本があったら是非読んで見たいのだけれど、
本書は全然そんな本ではありません。
ある事情で、コンサートが行われる。
プログラムはベートーヴェンの序曲、ハイドンの交響曲、
メインがベトベンの運命。
ところがコンサート中にオーケストラ団員が全員消えてしまうという、
笑ってしまうような馬鹿事件勃発。
前作では、指揮者が「ジャジャジャジャーン」の運命の動機に向かって
指揮棒を振るや否や、指揮台が大爆発。
指揮者は諸星あたるのように「チュドーン」と吹っ飛んでいくという、
笑うしかない話だったのですが、今回も笑える、いや、笑っちゃいけない
真面目な事件でスタート。
これを解決しようとする検事と、コンサートで出会った女性の恋話も
絡めて、話は進んでいく。
この恋話は、多くのクラシック・ヲタの妄想のような出会いと展開で、
ナイナイ、そんな上手くいく話は絶対無い。
しかも女性は美人で利口でおしとやか。
クラシック・ヲタを代表する作者ならではの、大妄想も楽しめるという
オマケ付き。
クラシック・ファンならずとも楽しめる一冊だ。
問題はどこで本書を手に入れるか。
古本屋で見つけたら、買っといて間違いなし。
※前作 『神宿る手』 の読書感想
http://rndocdks.web.fc2.com/doku005/doku00133.html