2007年06月 第216冊
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海音寺潮五郎 『蒙古来たる』(上下) 文春文庫
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鎌倉時代の元寇を基本とした伝奇小説。
北条時宗もしっかり活躍するのだが、
基本は聞いた事もない(架空?の)人物が大暗躍。
それでいて元寇の流れはしっかり掴めるから、
大法螺奇想天外ストーリーでもない。
されば面白かったか、と問われれば難しい質問。
文春版では分厚い上下二巻、古本の角川版では薄い本で全四巻。
海音寺の大長編を読みきったぁ、という海音寺ファンとしては
一仕事終えた達成感は得られるが、海音寺にも元寇にも
興味がない人には不向きでしょう。
そもそも元寇って、物凄いドラマなんだけれど、
なぜか古過ぎて作品になりにくい。
ただし元寇を描いた作品としては、一番手に登場してくる本なので、
戦国時代にも江戸時代にも明治維新にも飽きた人には面白い、かも。
この元寇後、参戦奮闘した御家人たちは強大な敵を追い払ったにも関わらず、
それに見合った褒美を貰えない。
やるせない憤懣が渦巻く中、幕府打倒に向かって行くのですが、
なんとなく現代にも通じるような話で、歴史は繰り返すんじゃないか思いませんか?
ワーキングプアやパート労働、きつい仕事を現場でこなしている人は報われない。
既得権益に胡坐をかいてたり大した能力もない正社員が、
何倍もの褒美を貰い続けている。
あんまりな状態が続くと、歴史は動きそうな気がします。