2007年06月 第220冊
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ハインライン 『夏への扉』 ハヤカワ文庫
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SFを代表する名作、ということで読んでみました。
正直感想は、同じタイムマシンものなら、日本を舞台にした広瀬正の
「マイナス・ゼロ」の方が面白かったかな、僅差で。
こちらはコールド・スリープで未来へ行って、タイム・マシンで過去に
戻って、それから・・・という内容。
これだけ古典的名作になっていたら、ネタバレも大枠でなら許してね。
この中で面白いなぁと思ったのは、投資信託。
生命保険会社はコールド・スリープ(冷凍睡眠)によって、三十年くらい
カチンコチンに凍らせて未来で解凍させる技術を確立。
これによって一切の老化もなく、人は未来へ冬眠状態に入れる。
生命保険会社は、その間、冬眠者の全財産を預かり、運用して
管理費や運用報酬などを得る。
なんだか近い将来登場しそうな商品で、リアル過ぎ。
この冬眠に入る時代が1970年。
解凍されるのが2000年というのが、今となっては苦笑い。
だって2007年の現在、コールド・スリープもタイム・マシンも完成
出来て無いんだもん。
今から37年前の人たちは、30年も経てばかなりの技術が達成出来てる
と思ったんだろうな。
それからこの小説の中では、インターネットやディスク装置といった
ソフトの発想には思い至らなかったようだ。
家事全般をこなしてくれるロボットは開発できるのに、様々な自称に
対応すべくチューブというものを差し替える事で対応させようとする。
小さなチップみたいなディスクでチェンジさせて無いのが面白い。
また、2000年という未来に行った主人公は、様々な事象を調べようと
するんですが、これを丹念に丹念に新聞をチェックしたり、実際に足を棒にしたり。
実際の2000年はインターネットで調べるんだもんね。
ただしネットでは、偶然の出会いやすれ違いは起こりにくく、
小説にするにも詰まらないかも知れない。
福島正美の翻訳はちょびっと古いけど、スイスイと読み進めて宜しい。
海外SFは難しい、と思いこんでる人には、良き突破口になります。