2009年04月 第314冊
-
檜山良昭 「パナマ運河を破壊せよ」 光文社文庫
-
第二次世界大戦における、IF(もしも)ストーリー。
こういった歴史イフ・モノが数年前爆発的に売れたが、
檜山良昭はそのパイオニア的作家。
中学生のころ「日本本土決戦」とか「アメリカ本土決戦」とか
ハラハラして読んだもんです。最近富みに懐かしくなって、
本書とか「ソ連本土決戦」なんかを購入してしまった。
「海底空母・伊四00」が、もし実戦投入されて、
パナマ運河を爆撃できたら、という架空戦記。
この「海底空母・伊四00」とは大型潜水艦のことで実在してます。
特殊攻撃機「晴嵐」3機を格納運搬できたというサンダーバードに
出てきそうなオモロイ潜水艦で、第二次世界大戦期最大の潜水艦。
地球を一周半も航行できる、脅威の航続距離を誇ってたんだぞお。
同形の伊四0一と子分格の2隻の潜水艦を従え、
4隻の潜水艦は各自バラバラにパナマ運河沖を目指します。
果たして、パナマ運河爆撃は成功するのか?
大体こういったイフものは、先が見えてます。
悪戦苦闘の末、パナマ運河は爆撃成功。
しかし歴史の大きなうねりを変える事は出来ず、
彼らのラストは哀しいもの・・・。
そんな風に想像しながら読んだんですが、
これがまたリアルに描かれてるんですわ。
まるで本当にあった事を、体験者から取材したかのように。
しかもパナマ運河爆撃を終えた後も、読ませます。
私の予想では、爆撃成功のあとは十ページくらいの後日談がつくのかな、
と思ってた。
ところがどっこい、そのあとの潜水艦も波乱万丈。
日本へ帰還しようと、涙ぐましい闘いが続く。
しかも終戦日が近づいている。
もうすっかり潜水艦乗組員たちに感情移入している私は、
どうにか彼らを故郷日本へ帰らせてやってくれ〜!と祈ってしまう。
果たして彼らが無事、日本に辿り着けるかも、本書の読みどころ。
山場を2つも用意してあった事に、2度感心したIF戦記。