2009年04月 第315冊
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森絵都 「アーモンド入りチョコレートのワルツ」 角川文庫
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本書は3編の短篇からなってます。
3篇とも鍵盤楽曲から着想されており、表題作はサティの
「童話音楽の献立表」という三曲からなるピアノ曲集の第三曲目。
ネットで検索すればMIDI演奏などで聴けましたが、
ピアノ初心者でも弾けそうな簡単な曲。
楽曲的には光る点が無いですが、題名はかわいらしいですね。
主人公の女のコは近所の素敵な絹子先生のところでピアノのお稽古に通い出す。
引っ込み思案だった彼女も、絹子先生の温かいレッスンで打ち解けてゆく。
そんな楽しいお稽古に、ヘンテコなフランス人男性が居候する。
絹子先生より若いワルツ専門の作曲家だというが、周囲の大人たちは
このフランス男性の胡散臭さに、絹子先生のピアノのお稽古から
我が子を辞めさせていく・・・。
「彼女のアリア」はバッハのゴルドベルク変奏曲を小道具に使ったジュブナイル。
中学生男女のムネキュンを上手く描いた作品で、個人的には一番楽しめた。
ゴルドベルクの楽曲由来と、主人公の不眠症、ヒロインの虚言癖が
うまく絡まって、それでいて少年少女たちのうまく気持ちを
伝えられないもどかしさが絶妙。
もう一作はシューマンの「子供の情景」が出てくる「子供は眠る」。
しかしこれは、全く好きになれなかった。
きっとあんな暴君な従兄弟がいたら、一緒に夏休みを
過ごすなんてありえないだろうから。
ウィーンとかベルリンで夏休みを過ごせるんなら、我慢するかもなぁ。
全3作品中、優良1作、まあまあ1作、キライ1作。
他の作品も読んでから、森絵都を判断したい。