2009年11月 第354冊
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唯川恵 「ため息の時間」 新潮文庫
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女流作家の恋愛小説ってのは、あまり読んでいない。
山本文緒と村山由佳くらいか。
最近それもなんだしと思い、藤堂志津子とか新津きよみにも
手を出したりして。それでいて瀬戸内寂聴や林真理子は未読なんです、
何十年も読書してる割には読書範囲が狭い。
今回はそんな女流恋愛小説家のひとり、唯川恵を初読み。
恋愛モノ9編からなる短篇集、実に読みやすい。
かるーい現実の中に忍び寄るちょっとした積み重ねが、
その人にとっては大きな人生の変転に繋がってゆく。
大きな社会の中では些細な事でも、一人一人にとっては多きな事、
それが恋愛関係。
浮気のしっぺ返し譚(全く新しい逆転復讐劇!)。
家庭を顧みなかった男がリストラされた挙句の慣れの果て。
捨てた女がいつもベランダでカラスに餌をやっていたが為に。
ネットの仮想世界で妻に近づいて試そうとする男。
幼い頃女を作って出て行った父を、老いて病院から
引き取る事になった男の苦悩。
けっこう後味を残す苦い話も混じっているし、それでいて
電車の中で2時間くらいで読みきれる軽さ。
「肩ごしの恋人」は直木賞受賞作なので買ってあるけど、
短篇集ならもう一冊読んでもいいかな、てな感じ。
さくさく読めるけど、山本文緒ほど面白くも無く。
少しブラックが好きな人は向いてるかも。