2011年2月 第438冊
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鯨統一郎 「邪馬台国はどこですか?」 創元推理文庫
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著者の「新・世界の七不思議」が世界史編だとすれば、
本書は日本史編。
歴史をそこそこ愛好している中間層にとっては、
驚く異端異説ばかりで、ただただ驚き面白可笑しく
読んでしまう。
歴史学的にどうなのかは考察さへ出来ないが、
知的興奮は存分に堪能できます。
世界史編ほど語り部たちの小芝居もうざくなく、
歴史そのもののミステリが味わえます。
本書日本史編は全6編。
悟りを開いたのはいつですか?
邪馬台国はどこですか?
聖徳太子はだれですか?
謀反の動機はなんですか?
維新が起きたのはなぜですか?
奇蹟はどのようになされたのですか?
日本史編と書きましたが、ご想像のとおり「悟り」は仏陀、
「奇蹟」はキリストです。
仏陀の苦悩にせよ、キリストの行動解明にせよ、
ここまで書いていいんかい?と思うくらいですが、
こんな風に解き明かしてゆく作品を読んだこと自体が
初めてなので、ただただ驚きました。
「謀反の動機」は本能寺の変についてですが、
まさか秀吉謀殺説じゃないだろな・・・と思ったのが
恥ずかしくなるような新説。
信長と天皇の経緯は知っていましたが、
その心情を想像し組み立て、その結果の行動を
どう結びつけるかで、こうも考えつくとは実に面白い。
日本史編として日本の事だけに集中してくれた方が面白かったのに・・・
と言いたかったが、「仏陀」と「キリスト」考察が余りに興味深いので、
本書は「新・世界の七不思議」以上に良く出来た傑作だと思います。
もうこれ以上のネタは望むべくも無いけど、
第3弾がいつか出てこないだろうか。