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2011年8月 第459冊
三野正洋 「太平洋戦争」こう戦えば… WAC

三野正洋  「太平洋戦争」こう戦えば…  WAC

私の大好きな「歴史イフ」もの。
WW2(第二次世界大戦)モノで最も好きな作家が
三野正洋と檜山良昭で、前者は検証派、後者はイフ戦記作家。

大好きな三野氏だが、著作によって甲乙があり、
本書の設定は素晴らしかったがそれだけに感想は少しがっかりだった。

太平洋戦争を研究検証すればするほど、どうしてあれほど馬鹿げた戦争に
至ってしまったのか・・・に尽きてしまい、それを言っちゃぁ話にならない。

どうにかこうにか活路は無かったのか、そこを検証するのが
こういったイフものなのだが、胸がスカっとする夢物語は少ない。

結局戦記に詳しい人ほど悲観的に判断せざるを得ず、読者に迎合して
夢のように書ける人は検証者でなくエンターテイナーに徹する覚悟がある人。
三野氏は戦史研究者だけあって、かなり有利な条件を提示しつつ、
結局日本に勝機は無かったことを実証してゆく。

1.御前会議で天皇が、開戦に異議を唱えられたら?
2.真珠湾を再攻撃していたら?
3.ミッドウェー海戦に勝利していたら?
4.栗田艦隊がレイテ湾に突入していたら?
5.山本五十六、山口多聞が生きていたら

大きく5章に分け、30のイフで検証していきます。
日米の生産能力は大きく差があり、局地的な大海戦で敵空母を
一二隻撃沈できたとしても、アメリカは翌年十隻の新造空母を
投入させるわけです。

一つ一つの海戦で敗因を裏返して勝たせ続けても、
生産能力を落とさない限りは大量生産された新造艦による
逆襲が待っています。

だったら米国本土に乗り込んで、本土生産拠点を潰せば?
と考えたいですが、日米の補給線は果てしないほど長く、
日本は兵站を軽視してましたし補給能力は惨めなほど弱かった。

現地調達(略奪)すればいいなんて、乱暴で治安を
考えていない発想であり、結局は現地の反発はゲリラ化し
民治に悩まされるだけ。

植民地政策でなく、世界平和と貿易振興で国力を揚げる事に
全力を注ぎ続けるしかなかったのか。

その間、欧米帝国主義のアジア侵略に歯を食いしばるしかなかったのか。
読んだり考えるほど、当時の日本は苦しい立場にあったんだなと思います。
戦争はいけないことでしたが、じゃあ当時の日本はどう動けばよかったのか。
その先を考えることで、現代日本の苦境打開にも通ずると思うのです。







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