2011年9月 第468冊
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雫井脩介 「栄光一途」 幻冬社文庫
ネットでの読者感想は振るってないですが、私は面白かった。
多くの雫井ファンと同様、彼のベストセラー「虚貌」「火の粉」
を読んだ後、本書デビュー作を読んだ。
そりゃベストセラーより最初期のデビュー作の方が、
格も質も落ちるでしょう。
そういったの抜きにして、単なる一作品として読むと、
そこそこ読めます。一日五十ページくらいしか読めない
遅読派の私が、毎日百ページ以上のペースで読みましたから。
寝る間も惜しんでって程ではないけど、暇を見つけては読んでいた。
たぶん生まれてはじめて読んだジャンル。
スポーツ界(柔道)のドーピング検査が主題。
世界王者の経歴を持つ若きヒロインは、現在
日本柔道強化チームのコーチをしている。
若くして彼女がコーチになったのは、無理を重ねて体を壊したから。
この裏事情もラストで明かされるのだが、世界を目指すスポーツ選手が
いかに過酷な試練に対峙しているのか良くわかる。
オリンピック出場選手選考も間近なとき、ヒロインは首脳部に呼び出される。
男子柔道選手で、ドーピング疑惑があると密告があったのだ。
彼女は三週間以内にその人物を調査しなければいけない。
容疑者は二人。
そのどちらも各々疑問点があり、じりじりと核心に迫ってゆくテンポもよい。
五百ページ近くある大作だが、一貫して飽きさせない。
柔道試合の対戦シーンも描写うまく、どっちに転ぶか進むか
わからない流れ作りも上手い。
柔道のドーピング疑惑ミステリーなんて面白いか?と読み始めたが、
予想以上に面白かった。