2012年02月 第498冊
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藤沢周平 「花のあと」 文春文庫
まさに「珠玉の短編集」と呼ぶに相応しい、短編7篇。
隠居盗賊、尼さん、酌婦、強盗殺人捕り物、
売れる前後の安藤広重、市井もの、武家もの
とバラエティに富んでいる。
読む短編ごとに江戸時代の違う側面が現れて、
次はどんな話かな?と読むことをやめれなかった。
特に表題作にもなっている「花のあと」。
前半は、これが表題作になるほどなの?他の短編よりは若干長いからなの?
と思って読んでしまうが、中盤からそれが間違いだったと気づき出す。
おばあさんの昔語りという形式をとっており、おばあさんの乙女の恋話かよ
と読んじまうんだが、これがとんでもないラストに繋がってゆく。
そりゃ、表題作になるわな、と感心した。
浮世絵師とか、摺り師とか、歌舞伎役者とか、落語家とか。
そういった芸人の裏話なんかが、私は好きだ。
そういった点で「旅の誘い」は、
歌川(安藤)広重の「東海道五十三次」がどのような経緯で作られたか、
それをプロデュースした男の転落と絡ませて読ませる。