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2012年04月 第503冊
平岩弓枝「御宿かわせみ」13 文春文庫
平岩弓枝  「御宿かわせみ」13  文春文庫

書名は「鬼の面」。

周りを固めるお馴染みのメンバーが、
結婚したり、子供が生まれたりで、
サブストーリーがどんどん掘り下げられて、
大長編モノならではの奥行きが広がった巻。

御宿かわせみを全く読んでない方も多いでしょうから、
今一度、話を整理しますと。

主人公東吾は、南町奉行与力神林家の次男坊。
次男坊と言っても、長男(兄貴)は身体が弱く、
その夫婦には子供がいない。

よって東吾が兄夫婦の跡取りといった体裁になっており、
周りからは神林家の若様みたいに持ち上げられている。

町奉行では奉行が今の局長、与力が部課長みたいな
役回りかと思うんだが、東京南部全体を支配している
南町警察機構の部課長だから権限も大きかったのだろう。

東吾の兄嫁香苗は旗本麻生家の長女で、
西の丸留守居まで上った旗本でも名門。

そこには次女七重しか残っておらず、麻生家としては
神林家の次男東吾(主人公)を養子として取りたい腹づもり。
七重は東吾のことを乙女の純情一途で恋い慕っている。

しかし東吾には事実婚している「るい」がいる。
このるいは、旅籠女主人ではあるが、同心の娘であり、
父死去後たくわえをはたいて旅籠を開業し、
生活の糧として暮らしている健気な設定。

東吾とるいは幼馴染で、相思相愛。
通い婚みたいなことをしているが、お嬢様(るい)の幸せを願って、
旅籠の番頭から女中まで二人の行く末を応援している。

上級旗本のお世継ぎと、市井の町人の結婚は
たしかに幕末といえども難しかったのだろう。

まぁ、そんな設定なのだが、いつまでも平行線だと
周りの人々も歳を食ってしまう。

そこで今回は長年の懸案だった麻生七重を、
手頃で手堅い登場人物とくっ付けちゃおうという流れになった。

好青年で主人公東吾も一目置く町医者がその相手なのだが、
実はこの町医者、とんでもない血筋の者で、麻生家の相手としても
ちっとも遜色なしという結末となる。なんともご都合主義な話。
著者の乙女チックな夢想が、縦横無尽に花開いています。






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