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2012年06月 第527冊
服部公一「クラシックの散歩道」潮文庫
服部公一 「クラシックの散歩道」 潮文庫

作曲家ハットリと言えば服部良一であるが、本書は別の作曲家・服部公一の著。
ウィキで調べても、目覚しい誰もが知っている作品を書いているわけではない。

大学院教授などを経て安定した作曲活動、主に合唱や校歌社歌、
児童向け音楽中心に書いてきた人。

著作物が多く、アマゾンで検索したら十冊以上出て来る。
講談社現代新書から「作曲入門」なんて面白そうな本も出しており、
いつの日か見つけたら買っておきたい。

と言うのは、文章が結構うまく、読みやすいため。
言ってることも現実的で、音楽界批判もしており、
決してお上品に無難にまとめるタイプではない。

表紙にも「クラシックのたてまえをはずして、本音で聴く楽しさ美しさ」と
載せてあり、クラシック界の「たてまえ」や「上っ面」に辟易としてきたのだろう。

著者の経歴が少し変わっており、音楽大卒でない。
学習院大中退、アメリカの大学留学経験を持ち、
NHKオーディション合格からプロの道に入った実力派。

音大のアカデミズムのしきたりに雁字搦めで年老いた人とは違うようだ。

本書で、なるほどねぇと感じた一節。
絶不調だった有名歌手が惨憺たる歌唱で演奏会を終えた時のこと、
もうボロボロの状態で、自己嫌悪でガッカリして舞台を下がったという。

しかし、そんな時でも日本人聴衆は「有名な歌手」だからと言うだけで?
アンコールをしつこくせがむ拍手を送り続けたという。

ちょっと音楽の解る聴衆なら、今日の歌手の体調くらい解ろうものなのに、
逆に嫌味かのようにアンコールを求める。なんと無様な話だろう。
まったく著者が嘆くこと、同感である。

著者の音楽性には、少し合わなかった。
ベートーヴェン、モーツァルト、シューベルト、チャイコフスキーと語り続け、
さて次は誰に話が進むかな?と期待したが、ストラヴィンスキー、
ガーシュイン、ホヴァネスと来た。

アメリカに留学しただけの事はあるが、同じアメリカ系なら
コープランドやバーバーだと良かったのに。

ただしホヴァネスとの暖かな交流が紹介されており、
人間ホヴァネスの一端が伺えたのが面白い。






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