2012年08月 第541冊
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伊坂幸太郎 「オーデュボンの祈り」 新潮文庫
伊坂幸太郎はあまりに有名になり、話題となった。
新しい作家、人気の出て来た作家も読もうと手を伸ばし、
「グラスホッパー」「重力ピエロ」に続いて本書を読んだが、
この3冊目で切り捨ててしまった方がいいのではないかと思った。
残念な事に彼のベストセラーは、まだ数冊買い込んであり、
読むのが苦痛なのだが、処分したものか挑戦してみるか悩ましいところ。
「オーデュポンの祈り」は、伊坂氏のデビュー作として有名で、
「デビュー作にしてこの出来具合は素晴らしい」と伊坂ファンは持ち上げているが、
こういった荒唐無稽ストーリーを、まったく受け入れられない私にとって、
多くの好評が、自己嫌悪に陥らせる。
仙台沖には変テコな小島があり、未来が見えて話す案山子が殺されたり、
嘘つきの画家がいたり、殺人を生業のようにしている男がいたり・・・。
自由な幻想を広げて、規定に囚われない世界を広げてゆく、
そんな設定にワクワクする人も多いんだろうが、
凝り固まった私の頭には、イライラするばかりで、
これを面白いと思えない自分は、ナンなんだかとそこにまでムカムカする。
でも天邪鬼な私は、それでもいいんだ。
たとえ数十年後、伊坂御大が大作家に伸し上がろうとも、
私は、彼の先見性は予見できなかった。
彼に素晴らしい才能と膨大な傑作を書く未来があったと
予測できなかった読者でも構わない。
こういう本が世間で受けていることに、理解出来ない。